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2022.03.30

CRAFTTHON 2021 開催レポート

  • CRAFTTHON とは?

日本各地から集まった多種多様なクリエイターらがアイデアを出し合い、京都の工芸と融合し新しく画期的なサービスやプロダクトを開発していくプロジェクト、それが「クラフト」×「ハッカソン」=「クラフトソン」です。

 

・CRAFTTHON の目的

・京都の多種多様な工芸やモノづくりの世界にどっぷり浸かり、知的好奇心を引き出す
・多様なバックグラウンドを持つ人とのチームワークを体験し、違う価値観に出会う
・新規事業の企画・立ち上げを経験し、自分の意外な一面を探る

 

  • CRAFTTHON 2021のテーマ:「積極的脱線ーシテンを変える、ミライを変える」

これまでに無い画期的なアイデアは、どの分野でも本流と少し外れたところできっかけが生まれ、多くの人が関わることで具体的なものへと変化してきました。

 

歴史のある京都で生まれ、育ってきた事業者は長い時間をかけ研ぎ澄まされた美意識と技術の粋である「工芸」の思想を持っています。その歴史を振り返ると、本流の中での小さな選択を繰り返しているうちに見えていなかった道、今では忘れられてしまった企業独自のポテンシャルの伝え方が見えてくるのではないでしょうか。「本流」から「積極的に」脱線していくことは「未知への挑戦」にほかなりません。

 

これまでの「当たり前」を疑い、地域文化に根付いた工芸から「仕組み」のヒントを見つけ、領域の異なるメンバーで、これまでに無いアイデアのタネとなるこれからの「ものづくりのイシュー」を導き出し、さまざまな価値観を持つ人々との対話を通して、京都の企業だからこそできるサーキュラーエコノミーの仕組み、ものづくり分野における価値の創出を考えるその一歩が、未来を変える大きな決断になると期待しています。

 

  • CRAFTTHON2021 の流れ(基本的に全てオンラインにて実施)

 

①2021年8月24日〜9月21日 参加者の募集

新たな製品開発やサービス構築を目指す、京都の多種多様な事業者のメンバー、もしくは社会人経験が3年以上ある方を募集しました。

 

②2021年9月26日 チームビルディング

全国から集まった15名が4チームに分かれてお互いの個性や、やりたいことなどを踏まえ、4つのチームを結成

 

 

③10月2日~3日、9日~10日 アイデア創出ワークショップ

テーマに沿ったサーキュラー・エコノミーや高付加価値のビジネス、工芸についてのインプットをゲストトークも交えながら実施し、アイデアを出していくためのワークショップを通じて4日間かけて1つのビジネスアイデアを創出しました。

 

④2021年11月7日 中間プレゼンテーション

創出したビジネスアイデアをブラッシュアップし、メンターとして参加いただいたミラノのビジネスプランナー安西洋之氏と、IDEAS FOR GOOD創刊者の加藤佑氏からフィードバックをいただきました。

 

⑤2021年11月8日〜2022年2月19日 メンタリング

中間プレゼンテーションでのフィードバックを踏まえて、2月の最終プレゼンテーションに向け、メンターである北林 功が課題やアイデアの事業化に向けて伴走支援しました。月に1回のペースで壁打ちミーティングを実施する中で、事業社や協力企業などの紹介も行い、ビジネスモデルをブラッシュアップしていきました。

 

⑥2022年2月20日 最終プレゼンテーション

ブラッシュアップしたビジネスアイデアを具現化するために、有識者や経営者等に向けて発表しました。(京都リサーチパーク10号館GOCONCおよびオンラインにて実施)

 

⑦2022年3月〜 事業の立ち上げ

協力いただく方々とのマッチングなども通じて、事業の実現に向けて動き出します。

 

  • 創出された4つのビジネスモデルと2022年3月現在の状況

1)チーム 「U’s Relay」

<メンバー>
松本 惇平(京都信用金庫)【京都】
安田 伸裕(楠岡義肢製作所/義肢デザイナー【宇治】
畠 照仁(電通)【京都】
寺脇 智子(ハンドメイド作家)【大阪】

<アイデア名>

「Emory」

皆さんが大切にしているモノにまつわる思い出を、単なる写真や動画でなく、ARやVRの技術を用いてより鮮明に残し、次世代へ繋いでいくサービス。例えば、思い出の詰まった着物を着た姿が、周りの風景とともに3Dで再現される。それを見て、当時の記憶をより鮮明に甦らせるだけでなく、これまでにない高いリアリティで家族や知人と思い出を共有することができる。そうして蓄積させたリアルな思い出と共に、次世代へと大切な品を受け継いでゆくお手伝いとなるサービスを提供。

 

<状況>

まずはチームメンバーで構成する任意団体として活動を開始。今後、VR等の技術を持つメンバーを加え、百貨店等との連携によって具体化を目指す予定。

 

2)チーム 「籠Cargo」

<メンバー>
磯野 恵美(Emieoデザイナー)【京都】
吉田 恵理(ライター)【神奈川】
西村 宗希(名高精工所)【京都】
松崎 隆明(株式会社SIP代表取締役)【京都】

<アイデア名>

「 捨てないギフトボックス『ROCCA』」

もらって嬉しいはずの「ギフト」。だけど「ギフトボックス」ってどうだろう?受け取った人は、その綺麗に装飾された箱を開き、たたみ、捨てることになる。私たちは、捨てる前提で作られるギフトボックスを捨てない選択肢を作ることで、ギフトを贈る人も受け取る人もより幸せになるアイデアを提案する。

<状況>

SIP社の新事業としてスタートする方向で検討中。百貨店や配送会社との連携によって事業化を目指す。ボックスの安定製造に向けても調整中。

 

3)チーム 「COMBO」

<メンバー>
Jayla Vicks(ミュージシャン)【京都】
會下 聡(京都信用金庫)【京都】
清水 雅士(マイクロバイオファクトリー株式会社代表取締役)【大阪・京都】
長田 知子(ATTIC PLANNING OFFICEデザイナー)【京都】


<アイデア名>

「住みやすいまちづくり〜地産地消の工芸品を利用した地域活性化ビジネス〜」

コロナ禍で多様な働き方が広がり、住みやすい場所で自分らしい生活をしようと行動する人が増えてきています。心地よく長くその土地に住んでもらうためには、その地域が活性していて親しみを持てることが重要です。工芸は古くから各地域に根ざして発展を遂げてきました。地域にある工芸を活用し、地域の活性化、例えば商店街などで地域に親しんでもらうことで、移住者にとっても地元の人たちにとっても住みやすい街づくりを応援するビジネスプランです。

<状況>

商店街等での導入を目指し、京都信用金庫と連携して取り組みを進めていく予定。「籠Cargo」チームとの合流も検討している。

 

4)チーム「mirai-miira」

<メンバー>
早川 延寿(複業家)【東京・京都】
河合 純(アストロバイオロジー研究所)【神奈川】
岡元 麻有(be京都館長)【京都】

<アイデア名>

「てんとわ」

つながりが希薄化した現代。コロナ禍でそれはさらに希薄に。地域で、世代間で、点在が生む勿体ない擦れ違い。点と点から線、面、輪、環へ。ありがとうからつながろう。多様なつながり方の新しいかたち。「ちょっとお願い…」を気軽にできる世の中に。金銭に換算しきれない感謝を伝えよう。つながって高まる社会関係資本からウェルビーイングへ。多世代間での多様な交流機会があたり前にある社会に。風土と文化を通じて、つながるまちへ。京都・西陣から始まる。

<状況>

既にSNSアカウントなども取得し、情報発信をスタートしている。まずは任意団体として始動し、西陣など京都の地域で実践・実証へ向けて活動していく予定。

 

  • アドバイザー

・安西 洋之(モバイルクルーズ株式会社代表取締役、De-Tales Ltd.ディレクター)

・加藤 佑(ハーチ株式会社 代表取締役、「IDEAS FOR GOOD」創刊者)

 

  • ゲストスピーカー

・竹浪 祐介(地方独立行政法人京都市産業技術研究所 デザインチーム主席研究員)

・三浦 耀山(土御門仏所 仏師)

・石井 裕二(株式会社キャステム 新規事業本部 IRON FACTORY 課長)

 

  • ゲスト講師

・大山 貴子(株式会社fog 代表取締役)

 

■ 最終プレゼンテーションを終えて、ゲストの所感

・竹浪 祐介氏

地方独立行政法人京都市産業技術研究所 デザインチーム主席研究員

 

クラフトソンへは、一昨年から関わらせていただいています。前年のテーマは「バグ!」、そして本年のテーマは「積極的脱線」でしたが、どちらも「不確定要素を活かすことでブレイクスルーを期待する」という主旨を表わしており、伝統産業が「作って、売る」という愚直な一本道のみでは立ち行かなくなっている現実を示しているということを再認識しました。

 

どのアイディアも、作り手と買い手という既存の関係性を一から見直し、モノ・対価・意思の流れをリニアからサーキュラーへと転換することで循環と維持を図る、刺激的な試みでした。

 

工芸を取り巻く人や地域ごと、包括的に再構築する提案も多く、新鮮味を感じました。同時に、これらの案の背景には、私も自身含め、多くの参加者世代が経験しえなかった「かつてあった時代」への回帰の期待があるのかもしれません。それを、ただ「戻す」のではなく、新しいやり方でアップデートするところに、クラフトソンの醍醐味を感じました。

 

地域活性化のプランは往々にして、人々が理想的な行動をすることを前提に設計されますが、現実では生身の人間が複雑に関わり合い、ときとして非合理的なアクシデントも起こり得るでしょう。そういった「脱線」をも楽しみ、より良い方向へと転化させるリアルな活躍も、クラフトソンを通して拝見できることを期待しています。

 

伝統産業の持つ「地域性」という特徴が、これからの時代に期待される「サーキュラーエコノミー」と親和性が高いという、明るい展望の手がかりが見られました。ぜひ、提案にとどまらず、社会実装でその可能性を現実のものにしていただけたらと強く願います。

 

■ 最終プレゼンテーションに参加した企業からの所感

  • 竹口尚樹氏

京都信用金庫常務理事  価値創造統括本部長

 

2017年の初回以降、クラフトソンは毎年大きな期待と興味を持って拝見しています。普段の生活や仕事の中では出会うことのない人々が、クラフトソンを通じて知り合い、共にプロジェクトに取り組むことから生まれる発見・価値の素晴らしさにいつも感心しています。

 

本年のテーマは「積極的脱線ーシテンを変える、ミライを変える」でしたが、4つのグループの生み出したアイデアは、どれもこれまでにないサービスや製品で、クラフトソンならではの「地域性」と「工芸」の要素を十分に踏まえ、かつサーキュラーエコノミーを意識した内容で、大変興味深いものでした。

 

今もなお続くコロナ禍の中で、多くの企業には、これまでの取組みからの、新たな挑戦が求

められています。そういった中で、クラフトソンを契機に、多角的な視点で物事を捉え、さらなる可能性を思案し、新たな価値の創出に挑戦する時間は、非常に貴重な機会になると考えます。そして、クラフトソン参加者の挑戦は、コロナで落ち込む地域を元気にしてくれるものと期待が高まります。これからもクラフトソンを応援していきたいと思います。

 

  • 中村 聡氏

大丸京都店營業推進部

「工芸」に軸足を持った新たな領域を開拓し、それを発信する場を提供する「クラフトソン」には、大きな意義があると感じました。オンラインツールを駆使することで、より多くの方の参加が可能になり、参加人数の面積的制約が減ったことで、多くの参加者の質問、意見が集まっていました。それぞれの提案が、さらにブラッシュアップされる機会が生まれる様子を拝見し、こういった活動や発表がもっと頻繁に開催され、新たなベンチャーが「工芸」を通して生まれることを願っています。

 

■ 総括

今年度もコロナ禍が続く環境下において、企画と運営のほぼ全てをオンラインやリモートで実施した「クラフトソン2021」。昨年度にオンラインでも成り立つということを実証できた経験を踏まえ、運営側としても海外ゲストも交えた取り組みといった新たなチャレンジに加え、時代背景を踏まえた「高付加価値」で「循環型」のビジネスアイデアを創出するということにもチャレンジした。約半年に及ぶ実施期間を経て、生まれたビジネスプランそのものの内容についても、工芸と町工場の技術や地域コミュニティの関係性向上など、京都ならではの新たなビジネスモデルを創出することができたと考えている。

「積極的脱線ーシテンを変える、ミライを変える」というテーマだけでも、すでに多くのチャレンジが見える企画だが、オンラインでのコミュニケーションが定常化する中で、実際に人と人との関係性を結びつけていくといったところに新たな価値、ビジネスの可能性を見出している取り組みが見られたことも今年の特徴であったと言える。

2021年9月「クラフトソン2021」の呼びかけに日本全国から多種多様なクリエイターらが集まり、有望な4つのビジネスアイデアが生まれた。オンライン・リモートのみでも適切な情報のインプットとディスカッションの設計によって、ビジネスとして具体的にスタートしていく取り組みを創出することができるというひとつの実績と今後への可能性を「クラフトソン2021」は提示できたのではないだろうか。

今回、4つのビジネスモデルの内容を見ても、循環型で高付加価値なものを生み出していくためには、目に見えない「ストーリー」や「価値」に加えて、「人と人との繋がり」を重視している時代に移行していることが明らかになった。ましてやコロナ禍が長期化する中で、人がモノやサービスに求める「つながる価値」の重要性は、世界規模でさらに増していくと思われる。

また、今回の取り組みを通じて参加メンバーから「京都のモノづくりのことを幅広く、深く理解することができ、今後に活かせる」「様々な人とのネットワークを広げることができた」「現代の世界の変化を理解することができた」といった声が多く聞かれた。このことから新規ビジネス創出のみならず、今後につながるような地域に根ざしたビジネス人材の育成効果および交流促進の効果があったと言え、中長期的に効果を発揮してくると考えられる。

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主催:京都NEW MONOZUKURI創出協議会
※京都市、京都リサーチパーク株式会社、一般社団法人Design Week Kyoto実行委員会で構成されています。

企画・運営:一般社団法人Design Week Kyoto実行委員会
企画設計サポート・運営サポート:株式会社ロフトワーク
協力:京都信用金庫