つくった野菜を食べてもらう喜び。京都エンジョイファーム 谷村岳志さん

2022年9月11日、グランフロント大阪で、京都と関わりたい人や京都への移住希望者と、府内地域で活躍する人との関係づくりを行い、京都府内各地を訪れるきっかけを創出することを目的としたイベント「ALL KYOTO FES」が開催されました。

DESIGN WEEK KYOTO もブース出展し、DWK の OPEN HOUSE にも参加した、京都のモノづくり企業で活躍されている様々なジャンルの5名の方に登壇いただき、どんな仕事を、どんな人が、どのような思いで行っているのかについて語っていただくトークセッションに多くの人が耳を傾けました。

北林:もともと農家に生まれたわけでもないのに就農に至った経緯など含めて、自己紹介をお願いします。

谷村:僕はサラリーマンの家庭に生まれたのですが、若い頃から自分で何かしてみたいという思いがすごくあったので、大学にいって経営学を学んでいたんです。そこで中小企業診断士という経営コンサルタントの先生にお会いして、営業が大切だということを学びました。

その後、名古屋で5年ほど営業として乳製品に関わる仕事をしました。地元が亀岡なので、亀岡に帰ってきて、次はどんな業種の仕事をしようかと悩んでいた時期に、京野菜の7割は亀岡市で生産されているという事実を知り、農業で幸せな生き方ができたら面白い!と、農業を始めました。

北林:京野菜の7割が亀岡で作られているというのが初耳の方、きっとたくさんおられるでしょう! 一つ前のトークセッションで、もりさんさんが西陣織のほとんどは西陣で作られていない、9割は丹後で作られてるって言っておられたんですけど、京野菜の7割は亀岡で作られているって言うのも一緒ですね。亀岡野菜ってあるんですか?

谷村:京野菜とか、丹後産の、という言葉はみなさんよくご存知ですが、亀岡はないですね。知名度がない、、、。京野菜と呼んだ方が断然売れるみたいで・笑。

北林:去年谷村さんにお会いして感動したことの一つに、採用されて働いている方が、元はなかなか社会になじめなかったのが、農業という仕事を通じて状況が改善していったというお話です。

谷村:4年前、私と同級生で今37歳なんですけれども、当時33歳の時にひきこもりで、社会と接点がなかった男性がボランティアという形で来られました。最初は週3日、3時間ずつぐらい農作業をしてもらいました。徐々に時間を増やしていったのですが、そのうちに家から出れるようになっていたんです。

週5日8時間も来てもらうこともあり、農作業でできることも増え、トラクターに乗れるようにまでなったり。今年2月の DESIGN WEEK KYOTO に参加したときに、ガイドブックに彼の写真が掲載されたんですが、それがめちゃくちゃ嬉しかったそうです。ご家族にもすごく自慢されて。OPEN HOUSE に来られた一般の方への説明も、彼にやってもらったのですが、そこからまた農業へのやる気を持ってくれたと思います。

北林:心を癒す効果が農業にはありますね。自分が使ったお野菜を誰かが収穫して食べてくれるっていう喜びみたいな。脱サラして農業を始めて、新規事業として始めて苦労されたこと、楽しかったことを教えていただけますか?

谷村:苦労したことは、やっぱり地域との繋がりですね。どうしても周りの方との軋轢といいますか、今まで確立されてる農業の形ってすごく大変で、そこを改善したいけどなかなかうまくいかない、みたいな。

北林:自分で作ったお野菜を出すレストランも経営しておられますね。めちゃくちゃリーズナブルなのにめちゃくちゃ美味しい。

谷村:そういうので新しいことをする時も、いろいろ苦労しました。でもやっぱり、自分の作ったものを、誰かに食べていただいて、美味しかったって言われるのは、やりがいがあります。今、一日働いた後のビールがめちゃくちゃ美味しい! 毎日ほんとに充実してるなぁって。

北林:サラリーマンしてた時と違いますね?

谷村:全然、違いますね。

北林:野菜作りでこだわっているところはどういうところですか。

谷村:元々は普通に栽培していたんですが、今年から有機栽培、自然由来の肥料を使いながら土づくりをしっかりすると、やっぱりいいものが育つなっていうのが、やっと10年経ってわかって。体にいいものを作っていきたいなと思ってます。

北林:今後、挑戦してみたいことってありますか。

谷村:今後は、農業をする方を増やしていきたいという思いがあります。生産規模を増やして、キャベツを大量に作っています。キャベツを大量に使ってくださるお客さんと繋がりながら、生産者を増やしつつ、キーマンを作っていくことができたら。

北林:今何名ぐらいで働いておられるんですか?

谷村:3名です。

北林:食育にも力を入れておられるとのこと。

谷村:5年前から亀岡幼稚園の子供たちと一緒に米作りをしています。出来たお米を、みんなで最後はお餅にして食べます。最近はコロナでできてないのです。それから、今年からサッカースタジアムの中に保育園が出来て、0歳から2歳の子達と野菜作りも始めます。

北林:めちゃくちゃいいじゃないですか。

谷村)ちょっと子供たちが小さすぎて、できるのかなっていうのは不安なんですけど、土遊び感覚で楽しんでもらえたらいいですね。

北林:アメリカの研究だったと思うのですが、人間って土に触れると、菌が触れて身体が強くなるというのもありますが、心が癒されるっていう結果も出てるんですよ。なぜかと問われるとまだはっきりしなくて、人間が自然の一部だからとしか言いようがなく。とにかく、土に触れる機会っていうのがいいんだろうなと。

谷村:ちなみに0歳の子は土を食べてました。身体にいいらしいですよ。鉄分が取れるとか。先生もいいって言ってました。

北林:それはちゃんとした土だからですよね。化学品とか入ってる土じゃなくて。土って、微生物が何かを分解して、植物とかを分解して先の先の先にできるんですよね。つまり、ある意味食べられなくはない。発酵しきったもの。

北林:亀岡でも少しずつ意識を高く持った農家さんが増えてきてるのは確かですね。亀岡の豊かな自然の中で、これだけの食べ物が生産されてるんだっていう裏側を知るということがまず大事なんじゃないかと思います。時々二条駅の辺りでも出店されてますよね。

谷村:二条駅では水曜日と日曜日にマルシェという形で出店してます。

北林:こういう背景がある谷村さんという人が京野菜の一部を担って、美味しい食材を提供して、人の心を癒してるっていう事実を、今日、少しでも色んな人に知ってもらえたのではないでしょうか。今日はありがとうございました 。

京都エンジョイファームさんで採れた野菜たち。白ナスやバターナッツかぼちゃなど珍しい野菜もたくさん育てている。

採れたての野菜が食べられるレストラン、「Kameoka Food Kitchen も運営している。

京都エンジョイファーム 谷村岳志さん

「農業の力で亀岡を元気にしたい!」と、亀岡市保津町に新規就農で畑を拓いた谷村さん。野菜を作るだけでなく、古民家を利用した、農業に携わりたいという人が集えるシェアハウス運営したり、人が農業を通して社会とのつながりを持てる機会を創出したりと、さまざまな働き方や生き方を「Enjoy」できる農業の形を提案している。レストランや家庭へ、できるだけ直販をしたいというのも、亀岡駅前に直営レストランを設けているのも、根底にあるのは、野菜の本来のおいしさを、できるだけ近い距離で、自分たちの言葉で伝えたいという思いから。

聞き手:北林 功(DWKファウンダー)

COS KYOTO(株) 代表取締役/コーディネーター
(一社)Design Week Kyoto実行委員会 代表理事
2010年、同志社大学大学院ビジネス研究科に入り、「伝統産業グローバル革新塾」に学び、現事業のベースとなる「文化ビジネスコーディネート」のプランを構築する。2013年、COS KYOTO株式会社を設立。国内外への販路開拓や商品開発、戦略構築、PRサポート、交流イベントの開催や人材育成など、地場産業をグローバルな「文化ビジネス」とし、世界を楽しくするためのコーディネートを手がけている。

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