仏像をドローンに乗せて飛ばしちゃった!土御門仏所 三浦耀山さん

仏像をドローンで飛ばすとは...!
某朝の情報番組や数々のメディアで人々の度肝を抜く「ドローン仏」。
「仏像をドローンに乗せて飛ばしちゃった」仏師・三浦さんの今まで、そして今後の展開に迫りました。

三浦さんの歩み、きっかけは『見仏記』

北林:そもそも、仏師を目指そうというところに至るまでの遍歴とは?

三浦:出身は埼玉で、大学まで関東で過ごしました。大学卒業後、就職した会社で関西の方に配属され、サラリーマン1年目を大阪で過ごすことに。

北林:その頃から仏像に興味があったんですか?

三浦:きっかけは、大学時代に、いとうせいこうさんとみうらじゅんさんがお寺の仏像を見て回るという『見仏記』を読んだこと。友人と仏像めぐりをするようになりました。そうして卒業後、関西で仕事するようになり、仏像好きとしては週末になるとやっぱり仏像めぐりを。明日香(奈良県)の雰囲気が特に好きですね。

北林:もともとIT系でしたよね。またどうしてそこから仏師になることになったんですか?

三浦:なんで決めたかは覚えてないけど(笑)、当時のIT系へのイメージと正反対とも言える昔ながらの手作りの仏像の世界に興味を持つようになった。そんな時、タウン誌で、のちの師匠が求人を出していたんです。「弟子募集」と。

北林:タウン誌で!!?

三浦:そうなんです。その求人には「経験問わず」とあったので、面接を受けに行ったのですが、実際にこの世界に何の経験もない人を取るのは実際難しいということで、彫刻教室に通うようになりました。そして1年後、正式に弟子に入門を許可されました。

北林:そこから、13年修行。どんな生活だったんですか?

三浦:滋賀県の山奥で、人と会わず彫刻を彫るだけの毎日でした。でも職人の気持ちがわかるようになりましたよ。好きなことをしていられるわけですから、それはひとつの幸せでした。

北林:それにしても、修行から独立までが13年にもなることは予めわかっていたんですか?

三浦:修業期間がどのくらいかは決まっているわけではないですが、10年くらいはかかるだろうと思っていました。当時25歳で、10年経っても35歳。そこから独り立ちしても遅くはないなと。

北林:独立のタイミングというのはどう決まるんですか?

三浦:師匠に「独立したいです」と言うだけですね。

北林:自己申告制!? 三浦さんはどんなタイミングで?

三浦:私の場合、東日本大震災が大きなきっかけでした。仏像が改めて見直されたような時期でして。その中で、将来「自分が彫った仏像です」と言えるような、後世に残るものを彫っていきたいと思いました。

北林:「震災」というワードが出ましたが、ぜひ三浦さんの復興の活動をご紹介ください。

三浦:私の地元埼玉で活躍する加藤巍山さんが Twitter で被災地に仏像を作りませんかと呼びかけていて、それに賛同して、ふたりでやっていくことになりました。


<縁>仏像奉納プロジェクト
被災地・東北に仏像を……。彫刻家・加藤巍山/仏師・三浦耀山によるプロジェクト。
その強い想いを胸に、彫刻家の加藤巍山/仏師の三浦耀山は、被災地である東北に仏像を納めるプロジェクトをスタートしました。岩手県大槌町の江岸寺様へご本尊を奉納させて頂く事が決まり、大槌町の復興と江岸寺の再建に歩みを合わせ、釈迦三尊像を納めさせて頂きました。

仏像奉納プロジェクト 出典

北林:こちらはどのくらいの期間で?

三浦:足掛け9年ですね。京都と埼玉で、お互いの距離は離れているけど、オンラインでコミュニケーションが取れてやり取りはしやすかったです。実際に作る作業のための移動は大変でしたが、私の実家と巍山さんのご自宅が近所だったので、帰省するついでに、ってことができました。(笑)

北林:人との縁も含めてのこのプロジェクトなんですね。

ドローン仏ができるまで

北林:続いて、かの「ドローン仏」の開発秘話なんてお聞かせいただけましたら。

三浦:仏教の教えで「阿弥陀来迎」というものがありまして。

ー 来迎. 来迎 (らいごう、 浄土教 諸宗では、らいこう )とは、仏教において、念仏行者の臨終の際に阿弥陀三尊が25人の菩薩と共に白雲に乗ってその死者を迎えに来て極楽に引き取ること ー

阿弥陀来迎 出典

三浦:それを絵で表現することは数多く残されていますが、立体を浮かせて表現することは基本的に不可能とされてきました。ただ、仏像を浮かせたいという気持ちがあり、ドローンに乗っけてみることを思いつきました。その前身では「浮遊仏」といってマグネットで浮かせていたんですね。浮遊仏では木彫りのわらべ仏というものを浮かせることができましたがドローンには重たくて乗せられませんでした。

北林:そもそもドローンって物を乗せる設計ではないですからね(笑)

三浦:そこで、こちらも DWK の OPEN HOUSE に毎年参加されている、3D専門に新しいことへ挑戦する会社「キャステム」の石井さんが、DWKの期間中にうちの工房にやって来た時に声を掛けてみたんです。仏像の3Dどうかなと。そうしてできたのがドローン仏。リアルに表現できることが面白いですね。常に新しいやり方を誰かが模索し、主流になった時にそれが残っていく。残ったものが正しいように見えるけど、その過程にたくさんのチャレンジがあったことは忘れちゃいけないなと。

▲ドローン仏 降臨

まだまだ止まらない!新たな試みとこれからの夢

北林:最近どんなことに挑戦されているかも教えてください。

三浦:比叡山の高僧である元三大師が鬼の姿になり疫病神を追い払ったという話があります。この鬼を竹工房 喜節さんとコラボして作りました。かつても心の拠り所として仏像がありました。収束を願うこういう時期に仏像を求める日本人の心があるんじゃないでしょうか。

北林:三浦さんの将来の夢とは?

三浦:大仏を彫ってみたいですね!つまり、後世に残るような仏像を彫ってみたい。修復している仏像の中には、400年程前に作られたものがありますが、現在修復して、また400年後も受け継がれていくことへの責任感を感じます。しっかりバトンを繋いでいきたいです。技術をしっかり残すことは職人の義務だと思うので。

対談動画の中では更に、仏像を作る際のルールやその歴史についてもお話されています。ぜひご覧頂き、仏像の世界観に癒されてみてはいかがでしょうか?

DWK オンライン対談 土御門仏所 仏師 三浦耀山氏

プロフィール

土御門仏所 仏師・三浦耀山(ようざん)氏

埼玉県宮代町生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、一般企業に勤めるも、かねてより憧れていた仏師を目指す。滋賀県在住の大仏師 渡邊勢山に師事し、以後13年にわたり師のもとで数多くの仏像彫刻・修理に携わる。2011年、雅号を「耀山」とし、翌年に独立。拠点を京都市に移し活動を始める。DWKには、2016年から OPEN HOUSE として毎年参加。

聞き手:北林 功(DESIGN WEEK KYOTO ファウンダー)

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